小児がんの治療に有効な抗がん剤新薬が開発される見込みだ。
小児がんの一種である神経芽腫は、10万人中2.5〜5人に発症するがん。 発症する患者の 90%が10歳未満で、発症年齢が高いほど予後が悪いという困った特徴があるのだ。 高リスク神経芽腫の場合の5年生存率は、 化学療法や免疫療法などの治療を施しても、50%程度とされている。
この小児がん(神経芽腫)に対して、名古屋大学の研究グループが画期的な新薬開発へ繋がる大発見をしたのだ。
研究グループはまず、新しいがん細胞培養法を確立した。これによって、がん化した神経芽腫モデルのTH-MYCNマウスの中から、 がん化初期の細胞を選択的に捉えて培養できるようになった。
発見はこの新しい培養法で得られた「がん化初期の細胞」を詳細に遺伝子発現解析・エピゲノム解析することで得られた。 この「がん化初期の細胞」の中のエピゲノム制御分子の一つであるポリコーム抑制複合体2(PRC2)が発がんと強い関連性があることが解ったのだ。
そこで、約500例の神経芽腫患者から集めた遺伝子も併せて解析したところ、 PRC2によって制御されるターゲット遺伝子の発現が、神経芽腫の悪性度と強い関連性を持っていることが解明されたのだった。
つまり、このポリコーム抑制複合体2(PRC2)を叩けば、 神経芽腫を効果的に治療できる可能性が高いのだ。この新薬の開発は、ターゲットの遺伝子さえ判明すれば、 分子標的薬を開発することは比較的に容易だからだ。
2014年の日本には20歳未満の神経芽腫患者が、162名も登録されていたが、 近い将来に小児がんの神経芽腫治療用の特効薬が開発される日は近いだろう。