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大手3社のキノコ健康食品
医薬品メーカーが健康食品に注力するのは、開発費が格段に安く、販売価格が高く設定できるためです。特にキノコ健康食品は、βグルカンという成分の実績が大きいため、多くのメーカーが手掛けています。

βグルカンの量と質から考えると、パン酵母抽出のベータグルカンが最善のはずですが、企業にとってのキノコ健康食品の利幅の大きさには敵わない様子です。


2003年11月14日 日経BP


【専門記者の目】
キノコの医薬品メーカー3社−−味の素、呉羽化学、台糖 キノコ健康食品を相次ぎ商品化、話題を集める


 キノコの医薬品を開発・製造する3社が、相次ぎ、キノコの健康食品を商品化し、話題を集めている。

 キノコを原料にする医薬品は癌患者の免疫力を高める作用があり、免疫賦活(ふかつ)抗癌剤と呼ばれる。

 スエヒロタケ菌糸体を培養している台糖バイオ生産研究所(台糖から2003年8月に分社化)が「ソニフィラン」(製造・販売:科研製薬)の原料を開発・生産している。

 カワラタケ菌糸体を培養製造している呉羽化学工業が「クレスチン」(販売:三共)の原料を、シイタケ子実体から抽出している味の素が「レンチナン」(販売:大鵬薬品工業と山之内製薬)を製造している。

 キノコの健康食品は免疫力を高める作用があり、末端価格に換算した市場が年間300億円ともいわれるアガリクス(Agaricus blazei Murill、和名:ヒメマツタケ)を筆頭に、年々市場規模が大きくなっている。

 キノコ健康食品は、効果・効能をうたえないものの、書籍出版や新聞・雑誌の広告、学会発表などを通じて、消費者の認知度が高まっている。実際に摂取して効果を体感できる場合も少なからずあることから人気を集めており、キノコ健康食品は末端市場換算で1000億円近くまで市場が拡大していると推定されている。

 これに対し、キノコの抗癌剤(医薬品)市場は、年間80億円弱規模(薬価ベース)と低迷。一時は合計1000億円規模だったが、適応症が絞られたことで市場が縮小した。

 現在は、化学療法剤や放射線療法と併用して効果を高める目的で使われており、個々の商品ごとに癌の部位も特定されている。

 筋肉注射剤「ソニフィラン」は子宮頸癌(放射線療法の効果増強)、経口剤「クレスチン」は胃癌および結腸・直腸癌と小細胞肺癌(化学療法と併用)、静脈注射剤「レンチナン」は胃癌(化学療法剤テガフール経口投与と併用)だ。

 抗癌剤を開発した3社のうち、最初にキノコ健康食品の市場に参入したのは、台糖。

 医薬品の成分になっているスエヒロタケ菌糸体の抽出物ではなく、スエヒロタケの菌糸体そのものを商品化した。

 「新免疫療法」を実践している近畿大学腫瘍免疫等研究所の八木田旭邦教授は、2000年から癌患者を対象とした臨床で効果を実証している健康食品インターロイキンX(IL-X)を商品化。その健康食品に配合されている3種類のキノコ菌糸体の一つが、台糖のスエヒロタケ菌糸体だ。

 台糖は、このスエヒロタケ菌糸体だけを配合した健康食品「健茸素(けんじょうそ)」を2000年秋に商品化し、通信販売を開始している。

 また、2001年6月に長瀬産業ヘルスケア事業本部が発売した健康食品「ベルマッシュ」にも、4種類のキノコの一つとして配合され、好調な売れ行きを示している。

 市場参入の2番手は、味の素。

 味の素医薬カンパニーは、独自のナノテクノロジーで、シイタケ子実体のβグルカンを超微粒子化した健康食品「ミセラピスト 超微粒子β-グルカン」を2002年末に商品化した。

 2002年12月から、味の素コミュニケーションズへの販売委託により、1都3県の限られた薬局で試験販売を開始。その後、一定の規模で生産できる体制を整えるとともに、医薬品と同等レベルの安全性試験で安全性を確認できたことから、2003年8月末にインターネット委託販売を開始するなど、試験販売の拡大に踏み切った。

 医薬品の「レンチナン」は注射で効果を発揮する薬剤だったが、味の素は、免疫賦活活性を示すキノコの主要成分であるβグルカンの粒子を直径200nmと、通常の1000分の1程度にまで微細化する技術を開発し、経口投与で免疫を賦活する効果を高めることに成功した。

 3番手は、呉羽化学。

 丹波マツタケの産地として有名な京都府の亀岡市で採れたマツタケM6271株をタンク培養した菌糸体を開発。カワラタケ菌糸体の医薬品「クレスチン」を販売している三共が、健康食品「マツマックス」として2003年9月に発売した。

 このM6271株菌糸体は、呉羽化学が薬物代謝酵素系への影響を調べて薬物相互作用の可能性が低いことを確認するなど、安全性への配慮もかなり高いレベルで評価を終えた上で、商品化したもの。

 2003年9月に名古屋市で開かれた第62回日本癌学会総会では、免疫賦活効果を癌抑制効果に関して3件の発表を行った。呉羽化学の生物医学研究所が、それぞれ東北福祉大学感性福祉研究所や東京女子医科大学、(財)札幌がんセミナーと共同で実施した研究の成果だ。

 キノコ健康食品の市場は、効果を裏付けるしっかりしたエビデンスが少ない中で市場が急成長している。高額な商品も少なくない。費用に見合うが効果があるのかどうか、消費者にはわかりにくい状況にある。

 キノコの医薬品で実績のある3社の参入で、今後、キノコ健康食品に対する信頼性が高まっていくことを期待したい。


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