2008.06.13 Friday
腎臓がんに新薬
2008年6月6日 読売新聞
腎臓がんに新薬
手足が腫れる副作用も
腎臓がんに対する初の抗がん剤となる2種類の新薬が、今春相次いで承認された。「ソラフェニブ」(商品名ネクサバール)と「スニチニブ」(同スーテント)で、いずれも転移があるなど進行したがんが対象だ。ただし、ある程度の効果は期待できても、がんを完治させるわけではなく、副作用もある。このため、当面は医療機関を限定し、専門医による慎重な使用が義務づけられた。(田村良彦)
腎臓がんになる患者は年に約1万2000人で、男性が女性の2倍多い。治療の基本は手術で、がんのある腎臓の一部または全部を摘出する。
がんが進行すると、肝炎に使われるインターフェロンやインターロイキン2による治療が主になる。手術で腎臓を全摘したうえ、注射を続ける。10〜15%の患者で、がんの縮小が見られるが、効果は限定的で、延命効果は確認されていない。
今回承認された二つの新薬は、いずれも「分子標的薬」と呼ばれる。飲み薬で、〈1〉がんを増殖させる物質の働きを抑える〈2〉がんに栄養を送る血管ができないようにして、がんを兵糧攻めにする――作用がある。
ソラフェニブは1月に承認され、4月発売された。肝臓がんにも承認申請中だ。4月に承認されたスニチニブは、近く発売される。
先月末に米国の学会で発表された海外データでは、治療後、がんが再び悪化するまでの期間は、インターフェロンの5か月に対し、スニチニブは11か月と倍増した。しかし、明確な延命効果は確認できなかった。
一方、副作用はほぼ全員にみられる。国内での臨床試験では、手足が腫れたり皮膚が乾燥してはがれたりする「手足症候群」が、どちらの薬でも半分程度の患者に現れた。スニチニブでは、出血を招く重い血小板減少が、半分近くの患者に起きた。いずれも欧米人には少ない副作用で、日本人では注意が必要とみられる。
筑波大泌尿器科教授の赤座英之さんは「腎臓がんの分子標的薬が認可されたことは歓迎できるが、日本での臨床試験は人数も少なく、“仮免許”のようなもの。生存率を伸ばせるか、未知の副作用はないかなど、効果や安全性を慎重に見極めながら使う必要がある」と話す。
承認の条件として、泌尿器科、抗がん剤治療の専門医がいる医療機関での使用に限られ、ソラフェニブは800例、スニチニブは1000例に至るまで、全患者を登録して副作用などを調査、報告することが義務づけられた。薬価も高い。発売済みのソラフェニブは、1日当たり約2万2000円、月60万円以上となる。高額療養費制度で患者負担は月十数万円までだが、医療費増大にもつながる。
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