2008.10.13 Monday
有棘細胞がん
2008年10月13日 読売新聞 医療ルネサンス
直径1ミリいびつな赤み
東京都狛江市の荒川敏雄さん(74)は、
8年ほど前、右の耳たぶに小豆粒大のしもやけのようなしこりができた。
入浴時、やわらかくなったしこりの表面のかさぶたを取ると、血は出ないが真っ赤になる。
痛みやかゆみはなかった。
3年後、かかりつけの診療所で、近くの大学病院を紹介された。
皮膚がんが疑われ、少し皮膚を切って調べると、
表皮の中間層にある有棘細胞のがんとわかった。
この「有棘細胞がん」と「メラノーマ(悪性黒色腫)」「基底細胞がん」が三大皮膚がんとされる。
高齢化とともに増えているが、皮膚がん全体でも患者数は年間約8000人と、少ないがんだ。
有棘細胞がんは、ただれた肉のかたまりのように見えたり、
初期には湿疹や治りにくい傷にも見えたりし、「赤い皮膚がん」と言われる。
紫外線が関係しているが、やけどや外傷跡などにもできやすい。
一方、他の二つは黒っぽい。
荒川さんの場合、幸いに他への転移はなかったが、
耳は丸ごと取り、あばら骨の軟骨で耳の形を作る、という手術の説明に驚いた。
いったんは耳を失う覚悟をしたが、会社の同僚に勧められて、
国立がんセンター皮膚科を受診、「なるべく耳を残したい」と相談すると、引き受けてくれた。
同センター皮膚科医長の山崎直也さんは
「顔や手の甲などに直経1センチ程度のいびつな赤みができて、
出血が続いたり、かさぶたがとれても冶らなかったりした場合は、
有棘細胞がんの可能性がある」と話す。
荒川さんは定年退職まで毎日、
ダムの調査設計会社の営業担当として全国の山間部の工事現場を駆け回っていた。
「車を運転して移動することも多くて、腕や顔が日焼けしてシミも多かった」と振り返る。
治療の基本は切除手術。
山崎さんは「皮膚がんは目につきやすいが、
放置してリンパ節に転移すると、有棘細胞がんの5年生存率は4割台と低い。
唇など手術で切れない場所や、
手術の負担が大き過ぎる患者には放射線も有効」と話す。
荒川さんの場合、根治に必要な最小限の範囲を切り、
病理検査でがんを取り切れたことが確認できた。
右耳は少し小さくなったが、左耳と比べないと分からない。
今も3か月に1回通院するが、再発の兆候はない。
定年後の趣味は月2〜3回のゴルフで、
「帽子と日焼け止めで紫外線には気をつけている」と笑顔で話す。
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