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リンパ浮腫の国際的治療法
2008年9月12日 読売新聞

普及遅れた国際的治療法

小川さん(右)から手のリンパ浮腫の状態のチェックを受ける女性=徳島市のリムズ徳島クリニックで

 「丸太のようにかちかちに腫れ上がった腕が、治療を始めると目に見えて細くなりました。良くならないとあきらめていたのに……」

 兵庫県の女性(72)は驚きを隠さない。

 女性は10年前に乳がんの手術を受けた。5年前から右側の腕や手が腫れ、年々太くなった。指まで腫れるので家事ができない。

 乳がんの手術が原因で起きたリンパ浮腫だった。手術や放射線治療でわきの下のリンパ管が傷ついて、流れが悪くなり、腕にリンパ液がたまってむくむ。子宮がんや前立腺がんの治療で足がむくむこともある。

 いくつもの医療機関で、指圧や電気刺激を受けたが良くならない。近くの医師の紹介で徳島市の「リムズ徳島クリニック」で治療を受けられることを知った。

 同クリニックは、重症のリンパ浮腫患者の入院治療を行う、全国でも珍しい施設だ。入院すると、女性は「複合的理学療法」という治療を毎日受けた。

 腕をよく洗って清潔にした上で、理学療法士から腕にたまったリンパ液を体に戻すマッサージを受ける。続いて、弾力性のある包帯を何重にも巻いて患部を圧迫。その後、腕の屈伸など軽い運動をする。退院後、自宅でもできるように、マッサージや包帯の巻き方など細かい指導を受けた。

 「一晩で3〜4センチも細くなりました。まるで魔法の包帯みたい」と女性は目を細める。

 院長の小川佳宏さんによると、「複合的理学療法」はリンパ浮腫治療の第1選択肢として国際的に認められているが、国内での普及が遅れた。入院患者のほとんどは、いくつもの医療機関を転々としている間に悪化した経験を持つ。

 がん専門医には「命が助かったのだから、後遺症は仕方がない」という意識が強く、「治療法はありません」と言われた患者は多い。

 こうした混乱を解消しようという患者会の働きかけなどで、今年4月から乳がん、子宮・卵巣がん、前立腺がんの手術を受ける際に、リンパ浮腫治療の指導が保険で受けられるようになった。リンパ浮腫患者が日常的に身に着ける治療用のストッキングやスリーブ(袖)も保険適用になった。

 手術後に正確な情報を提供するため、徳島県内では小川さんとがん拠点病院のスタッフが協力して、患者に説明するための冊子を作った。

 小川さんは「リンパ浮腫は、早期に治療を始めるほど重症化を防げる。がんの治療を受けた時から知識を持ち、迷うことなく適切な治療にたどりつける人が増えると良いと思う」と話す。
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