栄養不足の途上国には牛乳は不可欠な栄養物です。
しかし、栄養過多でメタボリックが問題となりるこの時代の我が国には、
たんぱく質、脂質の塊である牛乳の摂り過ぎは控えるべきかと。
牛乳の功罪は、途上国と先進国に分けて議論されるべきです。
その発
がん性も含めて。
2007年12月26日
読売新聞
骨粗鬆症…「牛乳は有害」説根拠なし
「超寿宣言・骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」(8月27〜31日)の中で、牛乳の効用を取り上げたところ、「牛乳を飲めば飲むほど骨粗鬆症になるという話だが、本当か」という質問が寄せられた。
実は記者は、こうした反響が届くことを予想していた。骨に限らず、牛乳は健康に悪いとする「牛乳有害説」を唱える本がいくつか出版されているからだ。
その主な主張は〈1〉牛乳の飲みすぎは、かえって骨粗鬆症を招く〈2〉学校給食の牛乳のせいで、アトピー性皮膚炎や花粉症が増えた――などだ。
しかし、これらの意見には首をかしげざるを得ない。
〈1〉の論拠の一つとして、北欧や米国など牛乳・乳製品によるカルシウム摂取量の多い国の方が、少ない国より骨折の率が高いことが挙げられている。この事実は、世界保健機関(WHO)が発表した報告書の中でも触れられている。
しかし、この報告書では、「骨粗鬆症の頻度には人種差が相当ある」「(カルシウム摂取量が少ない)日本人に骨折が少ないのは太ももの付け根の骨が短いこと」などと説明し、「高齢者はカルシウムとビタミンDを摂取することで骨折の危険性が下がる」とある。
さらに、WHOがこの後に出した別の報告書では「カルシウムの最も良い補給源は牛乳、乳製品である」と明記している。
実際、牛乳など乳製品の摂取が骨量(骨密度)を増やすことを示した研究は数多い。米国の大学教授が、乳製品と骨粗鬆症との関係を研究した論文139本を検証した結果、85%が骨量の増加や骨折率の低下に良い影響を与えるという報告で、「どちらとも言えない」が13%、マイナスの影響はわずか1・4%だった。
農林水産省などが今年3月まで2年間実施した全国調査では、成人女性約2万5000人を解析した結果、小中学生時代にたくさん牛乳を飲んでいた人ほど骨量が高かった。
〈2〉についても、そうした研究報告は存在しない。ただし、1歳未満の乳幼児に牛乳を飲ませると牛乳アレルギーを発症しやすくなるため、1歳以上になってからが良いとされている。
北海道大名誉教授(畜産化学)の仁木良哉さんは「牛乳が健康に悪いとする科学的根拠は、探してもなかなか見つからない。そもそも数千年もの昔から、人類が命を支えるために摂取してきた乳製品を悪者に仕立て上げるのは、理解に苦しむ」と話している。
もちろん、連載でも書いたように、牛乳さえ飲めば骨が丈夫になるわけではない。高齢者の場合は子どもや若者に比べると、牛乳の効果は弱くなる。カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨に吸着させるビタミンK、コラーゲンを強くするビタミンBも必要だ。
バランスの良い食生活と運動が骨を強くすることは、改めて強調しておきたい。(山口博弥)